エドワード親書 2005年8月号 |
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ポルトガル巡演に寄せて |
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ただ、旅慣れたはずの僕が、今回はなかなか時差ボケが治らないのです。 さて成田空港での小さな解散式で述べたように、今回のポルトガル巡演がただの思い出になるか、今後に大きく生かしていけるかは、みんな次第ですね。期待しています。中学生英語でいいから文通などで、折角のこの共演をさらに有意義なものにして下さい。 さて、一番のハプニングは何といってもポルトガルのときゆく者が前日になって突然声を失い、出演できなくなってしまったことでしょう。それをさりげなく引き受けて、両大役をさらりとやってのけた加代子さんに、大きな拍手!本人もやりたかったのでしょうが、達成感・充実感は相当のものがあったでしょう。それに最初と最後だけは誰か様の強い要求によりポルトガル語で……。本当によくこなしてくれました。声の方も好調で、美しい響きがお客様をうっとりと引き込んでいたように思います。とにかく、大健闘、おめでとうございます。そして有り難う!しかし、ちょっと太りましたかね? 野崎はエレクトーンと指揮で活躍。ポルトガルの言葉の練習でみんなが大変そうなとき、ひとりほくそ笑んでいたようですが、余裕が感じられたのは、今回の仲間達がとってもよかったからかな?このオペラについては、しっかりと音楽を掴めてきたようなので、信頼をおけるようになりましたが、東京公演でも指摘したように、みんなの歌をじっくり聞きながら指揮者として音楽を引っ張ってゆく、という至難の作業、これからももっと頑張ろうね!本当に凄いことを貴女はしているのです。厚かましくてよかったね。誰かさんの優秀な?に恥じないようにね。期待しているよ。 お調子者の大地。今回はソロの歌がなく、ザビエルという台詞だけの大役、よくあのポルトガル語を覚えました。発音は最初の頃、恥ずかしくて聞いていられなかったけれど、最後の公演辺りでは何とかわかってきたように思い、少しホットしました。その他、裏方でも活躍しましたが、何より活躍したのが国際交流でした。はっきり言えば一番英語ができなかった筈なのに、みんなの中で一番会話していたのは大地だったでしょう。あのハイテンションに呆れていた方も多いでしょうが、ポルトガルの仲間からは、クレイジーと言われながらも愛され、幸せだったことでしょう。 哲人のマンショ、東京公演よりさらに少し前進したように見えました。ポルトガル語はカンニング等のごまかしが気になったけど、まあ赦してあげましょう。今まで俗世間に染まりすぎた感があったけど、無心になってゼロから自分を見つめ直し、そして早くタバコをやめて、きれいな声で歌えるよう期待しています。そしたら、もっといい役が回ってくるかも知れないよ。すべて努力次第。神様はすべて御存知、ですから。誰かと比較してというより、無限の向上欲を! 未知行のビデオプロジェクター。一台を故障させて大変だったね。でも効果はやはり大きかったように思います。その上、字幕を全面的に使うことにしたため、エイリアンの協力もあったけど、徹夜の作業を余儀なくされていました。(しかしその割にはよく飲んでいたね?ワインもチーズもパンもみなあんなにおいしいから仕方ないか?)これからも外国で日本語のオペラを公演するには字幕は残念ながら不可欠ですね。字幕のお陰で、ポルトガルのお客様がよく内容を理解して下さったことが、成功のひとつの主因だったように思います。ビデオプロジェクターの可能性を広げる巡演でした。 そういえば、マイペースのNHKの佐藤さん。飄々とサムエでホテルを歩いていらっしゃるお姿が何か印象的でした。どんな映像になるか、みなが期待していてプレッシャーでしょうけど、頑張っていいものを作ってください。売り込みの方もよろしく。 それから、パンフレットにはみんなの写真やプロフィールが入った立派なものを期待していたのですが、どうやらカットされていたようで申し訳ありません。エストリルでは、皆さんの名前が入っていた差込みのものだけ、あとで頂きました。何か別にあったらお知らせしますね。ごめんなさい。お願いしていた広告も忘れ去られ、一部広告料ももらえませんでした。仕方ないです。 では東の横綱、茂木生子さん。ショウコというスミイカを出されたときは笑ってしまいましたが、今回も大変なご家庭の中、よく参加してくれ、みんなを明るく引っ張ってくれました。モッチャンの元気さがみんなにどんなにいい影響を与えているか計り知れないと思っています。いつまでも、元気で行きましょう!台詞も日本語ではあったけど、気合いが入っているのを感じ、嬉しく思っていました。 西の正横綱、佐藤佳子さま。モッチャンと同じ年なんて、なんてステキな両横綱。前回よりも一皮も二皮もおむけになり、優しくみんなに接して下さり有り難うございました。はじめての人が多かったのに、すっかりとけ込まれてさすが、でしたね。心配した歌の方も1回しかレッスンらしいことが出来ませんでしたが、しっかり歌っていました。ポルトガル語も随分うまく発音していました。8日頃、ご帰国とか、みなでお会いできるのをタノシミにしています。 となると、東の大関、チーママこと永野千鶴子さん。淀君の存在感たっぷりの演技は堂々たるものでした。半分は知らなかった人たちの中、西の大関中村芳子さんと仲良くなってくださり、有り難うございました。何しろ、中浦ジュリアンの故郷西海町(現西海市)からのご参加、とっても嬉しかったです。これを期に、各地の皆様と交流を続けて下さり、西海市公演を是非今度こそ実現しましょう。僕もいろいろ働くつもりです。 その娘で少年ジュリアンをやった、永野順子さん。当然西海町出身。ミユキちゃんと意気投合して、燃えていたのが伝わってきました。何しろ、あの大人のジュリアンの青年時代ですからね、気合いも入ったでしょう。歌はまずまずでしたが、最後はさすがに疲れが集中力を乱したかも知れませんね。他のすべての出演者と一緒に演技している、共に支え合おう、という気持ちで、これからも頑張って下さい。 そのミユキちゃん。八女からよく練習に通ってきました。いつも演技に集中している姿は気持ちよかったけど、歌も少し自信が持てるようになってきたかな。歌も演技も同じでなくちゃね。不自然なことをしなければいいのです。とにかく、まだまだ若いので大きく育って下さい。ゆっくりレッスンしてあげられる日を! そのお母様、中村芳子さん。西の大関にされて、ご迷惑でしたか?大きな笑い声はさすが親子、と思えて微笑ましかったです。ご家庭のご様子を垣間見るようで……。これからも娘さんに負けず、他の若者達の歌や演技に負けず、大いに羽ばたいて下さい。羽ばたきすぎたら、娘さんが何とかしてくれるでしょう。それぞれの世代にできるステキなことがあります、頑張りましょう。とにかく両大関、ご苦労様でした。 親子というと波佐見のステキな母娘を。同じ千鶴子でも、ほんわかした安弘千鶴子様。最年長(といってもまだ?歳)でご参加下さいました。これこそユニバーサルデザイン。オペラツアーの大変さを成田で述べておられましたが、よくチャレンジして下さいました。日本でオペラをやるだけでも大変なのに、海外で海外の出演者と共演して3カ所も巡演する……。ご苦労はお察しします。お身体は帰国されてどうですか?ご自愛下さり、この巡演を冥土の土産にされるのはあと数十年先にして下さいね。 娘の朋子ちゃん。ちゃんというのが何時までもしっくりいって、これでいいのかなあ?と思えるほど可愛い朋子ちゃん。浴衣気を着て座った朋ちゃんが13歳くらいに見えたのは僕だけではないはずです。いいねーー。でも朋ちゃんがきりっと歌っている姿が、またしっかりした大人の役者のようで、なかなかの存在です。これからもみんなとよろしくね。ポルトガルのケーキはいかがでしたか? 勝った、と思った?どう思ったかな? ま、それぞれの国民の好みの味は違って当然だからねーー。 みなさん、特に女性。ポルトガルの中年女性を見て安心していませんか?ここは日本ですよ、お気を付けて。そういえば、愛情不足で太るんだと力説していた横綱がいたなあ、確か佐藤佳何とかという……。誰もが御存知の……。ごめんなさい。でも太ってるのはすべて愛情不足? なのかなあ?大きな愛に気づいていないだけ、とか?なーんちゃってね。 ここで結城秀吉を。今や若者にも人気絶頂で、楽しい秀吉を今回も歌ってくれた結城さん。飄々とみんなの会話に入って冗談をふと宣われる結城さんは、本当に今まで以上にステキな存在となってきていらっしゃるのを感じます。さらに優しく成長したね、といわれると気恥ずかしいでしょうが、そんな感じで、僕は長いお付き合いをさせていただいて本当に本当に嬉しいです。これからも若者のアイドル?としても活躍して下さい。 仏門に入られたお二人。まずは我らが尊敬する忍室の廣田さん。得意の日本語でとはいえ、気合いの入った忍室の言葉が、字幕のお陰でポルトガルの皆さんに、大いに興味を持っていただけたようです。歌の方も、田渕さんの音の違いに引きずられかけながらも、よく頑張ってくれました。思わず、僕も歌ってしまったところがありますが、長い旅を終えの男声合唱などは、エストリルなど僕が入らなくてもきれいにハモっていたように思います。入らなかったから、かな? 一方のブッチーこと田渕さん。どこに入ってもマイペースでかつ元気いっぱい。もう皆さん、呆れるばかりだったでしょう?みんなの心配をものともせず、自分の道をどうどうと歩む姿、まさしくB型の典型、さすがでした。しかし、田渕さんも独特の英語で、ちゃんとポルトガル人と会話され、大地と同じく、B型の強みを確認させて頂きました。これからもそれを大事にされつつ、みんなとの協調、みんなとのアンサンブルの楽しさを、極めていきましょう。極めると凄いのです、B型は。 そのB型、谷口あゆみ。もともと面白い子だと思っていたけど、さらにこの頃面白くなってきたね。おんなから、誰かに命令されてベルナルドになりどうですか? 愛と情熱の人、ザビエルに心から惹かれるようになりましたか?ピンとくればその気になれるB型、台詞もかなりよくなったね。発声は、あと一息。あのアドバイスが分かるようになると、B型のあの恐ろしさが、輝きだしそうです。いつかまたみて上げられたらと思います。 京都からのタカコ姫。京都でサブの指導をしてくれた上、オペラプラザ京都を代表してポルトガルに来てくれました。なかなかのキャラクターがみんなに親しまれていましたね。おんな、という役もう何度目かなあ?ちょっとずつこの役の奥行きを感じてきてくれていると嬉しく思っています。またミゲルのモッチャンと抱き合う姿、忘れられません。恋人同士に見せることは僕にも出来なかったかも知れませんが、母親の様な気持ちで抱き留めてあげてくれたのでしょう。それなりに見えたと思います。 冗談ではなく思うのですが、身体が横に大きく膨らんでいる方も、美しい方はいくらでもいらっしゃいます。御存知のナジーエストリル芸術監督の奥様、詩人のドウルセ。ステキじゃなかったですか?ルノアールの裸婦像だって、美しいと思える方も多いでしょう?大切なのは、その人柄で、体型ではありません。僕のように働き蜂のようにこき使われるのが使命の人は太りようがないし、ほんわかと世界に微笑みかける女性が、たおやかなお姿をされていてもいいのです。はい、この通り何とか苦しい弁解をしておきます。 そして、吉田姉妹。これまた面白いキャラクターで、皆を和ましてくれていました。真衣ちゃんの喘息を乗り越えて頑張る姿は、数年前の彼女が大きく育とうとしている姿、とも受けとれました。京子さんとは、今までも今回もそれほどはゆっくり話せませんでしたが、言葉以上のフィーリングで会話なさる彼女とは、あれで十分だったように思います。ね、京子さん? 真衣ちゃん、音大に入って、前回のスペイン巡演よりしっかり成長したね。これからも身体を鍛え上げ、発声を磨き(君の京都の先生にくれぐれもよろしく)、また近いうち歌いにおいで。声を強くしたり太くしたりするのは、モチロン間違いですが、よく通る声を追求して下さい。 深々と軽々とした声をまず基本に、と僕がよく話しますが、声の強さや太さは本人の骨格や生まれつきの声帯と結びついたことなので、ちょっと違います。自分のオリジナルの持ち声を軽々と深々とさせておくと、本人なりにどんな声でも出せるようになる、ということです。 佐賀県から、オペラプラザ長崎の一員としてきたお二人。まず山下さん。だんだんB型らしいキャラクターが輝いてきましたね。演技も楽しそうで、もっともっと鍛えたくなりました。モチロン発声もね。何しろ唐津から一人来てくれたのだから、気合いも十分だったことでしょう。唐津公演を僕がキャンセルしたときは、残念だったけど、いつか必ず実現します。その時はまたよろしく。 今や、チェッカーとしてその名を轟かせている坂田さん。今回は合唱に専念(衣装もあるか)できてよかったね。女としてソロの実力も試したかっただろうけど、またこの次に。確実に実力が付いてきているのは本当に嬉しいことです。ジュウサンナナツかも知れませんが。多くの妙齢のご婦人達にも大きな励みとなりますので、これからもその優しい心で皆を励ましてやって下さい。人間は年齢を重ねれば重ねるほど、ステキになっていけるんだなあ、といういい見本になりましょうね。 通訳としても来てもらった前田エイリアン。基礎体力の問題があるから練習熱心には見えなかったけど、変に皆と群れない姿はなかなかのものでした。アメリカで鍛えられたかな?あのときも言ったように、波佐見公演の時より声は安定していたね、ピッチもまあまあだったし。海外の巡演の方が体力、気力と要りそうな気がするけど、エイリアンは別か?エストリルのプールで泳いでいた姿は、さすがもと水泳部、という感じがしてきれいでした。こんど一緒に泳げる機会があるといいね。 最年少のピー。ポルトガル人からもピーと呼ばれてすっかり馴染んでいましたね。はじめて大人の中に子供一人、だったんじゃないかな?大人ってどうだい?すてき? それから、近頃のチビのはやりで、わざと悪い言葉使いを真似ていたのを、何人かに注意されていたけど、素直なピーに戻ると、ピーちゃんてこんなにいい子なんだと感動されてもいました。小学6年生でこんな経験が出来、ほんとうによかったと思います。歌も演技もしっかり成長して、またみんなと舞台を踏みましょう。 やはりオペラプラザ長崎の井元さん。みんなから随分明るくなったね、と言われていました。この際遠慮なく、思い切り自分のいいところをさらけ出したらどうですか?疲れやすい身体かも知れないけど、演技に対する集中はいつもなかなかのものです、歌も響き出して良くなってきました。もうひといき、呼吸を鍛えて音程を安定させればもっともっと良くなりそうです。これからが楽しみですね。 実。少年も大名も出来なかったけど、それもいい経験だったのでは?若者にはラッキーを望まず、実力を積み上げて成長していってほしいと思っています。実に今必要なのは、歌も演技も基礎の表現力を高めることです。一応のことをやるだけじゃなく、ビックリするほどの努力の積み重ねが、ビックリするほどの喜びを実にも、お客様にも与えるでしょう。素直な実をいいな、と思うこともあります。しかしあまりに世界のこと人間のことを勉強しなさ過ぎです。人間の歴史をじっくり見つめたら、何かをきっと感じて大きな成長につながり、本物の自信に繋がるよ。 ミッチーにも共通したことを感じますが、ミッチーは自分でも言ってるように頭がいいので、器用に何でもやれてしまうところがあります。しかしそのミッチーの器用さが大きな成長を妨げることにもなることもあります。疲れやすく、さぼりやすく、ついだらしなくなってしまうこととも関係するのでは?疲れやすい自分で、疲れた疲れた、という青春がいいか? 疲れを考えず何かに没頭して、何かを成し遂げてみる青春がいいか? 自分で選んで下さい。それからミッチーも実も、どうして発声を鍛えようとしないんだろう?君たちに今一番必要な技術だと思うけどね。 思い返せば、僕自身もポルトガル語の台詞が思うように言えないで、悔しい思いをしていました。みんなにできるだけポルトガル語で、と言った以上僕が出来ないと……、とも思いました。しかしそれ以上に、観てくれているポルトガル人に、生のポルトガル語でジュリアンの気持ちを訴えかけたかったから、できるだけポルトガル語でとチャレンジしました。何しろみんなよりも何回もポルトガルに来ているのだから出来ないと恥ずかしいよね。それにしてもジュリアン、何と大変で素晴らしい役かと痛感します。でも代わりのジュリアンが早く育ってほしい。エドワードを越えてほしい。心から願っています。 ところで、このオペラに参加者の皆さんは何が一番印象に残りますか? 一度目は何と重い内容だろう……、かな?二度目ではミゲルへの共感が膨らむかな。三度目くらいで逆境を乗り越えようとする人間すべてへの賛歌を感じだし。そして四度目以降くらいで、だんだんときゆく者の最後の言葉に深い共感を覚えて行くようになってくれているかな。 今回最初のセトウバルの公演は、普通の劇場でしたが、劇場スタッフの皆さんが親身になって協力して下さり、本当に助かりました。観客のオールスタンデイングの拍手には、皆さんもさぞ嬉しかったでしょう。シネス城での公演は、最高のロケーションで忘れられないものになりました。マルチノはどんなに気持ちが入ったことでしょう。マイクを使って歌うことに抵抗があったかも知れませんが、ミキサーの方も頑張ってくれ、結果的には使ってよかったと思います。対照的に最後のエストリルのサレジオ教会での公演は最高の音響、生の声で会場を一つに出来る幸せ、歌手冥利に尽きる、って感じかな。 柔道の小林清先生、シネスのこと本当に有り難うございました。シネス市長のマヌエル・コエリオさん、助役のエドアルド・フェレイラご夫妻、舞台監督のカルロスさん達、皆さん、有り難う! 日本では「夢」は叶わぬもの、というニュアンスで語られます。英語で「Dream」は叶えるものとして使われます。夢を叶えましょう。皆様と共に。そう、一歩ずつ……。
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