エドワード親書 2005年11月号 |
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ユニバーサルデザインオペラ「魔法の笛と鈴」松本公演に寄せて |
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まずパミーナの倉科京子さん。募集を始めた頃から、何度もお問い合わせいただいたようで、ご熱心な方だろうと思っておりましたが、歌唱力がしっかりしていらっしゃり、パミーナに選んで本当によかった。いろんなアドバイスもさせていただきましたが、本番が近づくにつれどんどんよくなってこられ、とても嬉しかったです。コーラスの皆さんをそっと引っ張ってくださっていたことも存じております。ありがとうね。パミーナと自分が重なり、日常でも純粋で一途な愛、貫いていらっしゃることでしょう。ねっ! 上原隆二さんのタミーノ。古い友人の紹介で参加していただきましたが、伸びのある見事なテノールを響かせてくれました。本番での私の指揮との連携も楽しく、今一緒にステキな音楽を作れている、と実感していました。演技の方はあまり細かく指導できなかったけど、頑張っていろいろ工夫していらっしゃるのを見てるのは、これも楽しいものでした。オペラは、演技も歌も、本当に奥が深いものだと思います。これからも私の無限パワーをいつでも差し上げますので、どうぞご自由に使ってください。 夜の女王の隠岐美江子さん。リズムの遅れをかなり注意して来ましたが、本番は何とかなりましたね。いや、しましたね。何しろオーケストラとは距離ができるので、オペラに慣れていらっしゃらないと、合わせるのは大変なのです。だから、あんなにしつこく、僕と一緒に呼吸するつもりで、とみんなにも話したのです。 ザラストロの松岡良彰さんは、オペラプラザ福岡から来てもらいました。彼とは10年余り前のポルトガル公演にも参加してもらった頃からのご縁ですが、今年福岡公演で3回ほどザラストロを歌ってもらっていたので、安心してお呼びできました。 パパゲーノの大地。代役でやってもらったけど、今回少し成長してくれたように思います。皆さんが、よくしてくださり、本人ものびのび頑張れたことと思います。チビッコファンのみならず、住吉先生の奥方まで、ファンになってくださったとお聞きし、恥ずかしいところです。体を楽にできるようになれば、もっと自由な表現ができると思いますが、何しろB型ですから、マイペースで成長してゆくことでしょう。これから発声を磨くことも、大きな課題です。皆さん、応援してあげてください。 パパゲーナに選んだ上野かおるさん。選んだときビックリした方もいらっしゃったでしょうが、練習に入れば、逆に皆さん、ビックリ仰天されたのではないでしょうか?上野さんに合わせてサルの台詞も多少いじりましたが、それも、上野さんの魅力をさらに引き出していたように思います。芝居心の塊のように、楽しんでいらっしゃり、みんなをとても楽しませてくださいました。お人柄からにじみ出る演技は天性のものでしょうか、ご努力もあるのでしょうか、いずれにせよ「ふくよかな」パパゲーナをしていただいて大正解だったと思っています。 モノスタトスの哲人。この役が身についてきた感じですね。リズム感もいいし、集中力もタバコを吸っている割にはよく保ててホットしています。 武士の内村寛治さん。お生まれになった松本での公演はいかがでしたか?日比合作オペラ「高山右近」の初演からずっと、目がご不自由でありながら、いつも僕の難しい要求になんなく応えてくださり、とても嬉しく思っています。今回の武士もアンサンブルの相手の松岡さんとも声が合っていましたね。奥様も、うちの優秀な?と仲良く遊んでくださり、どんなミスも笑って許してくださり、これからも二人のやり取りを微笑ましく眺めさせて頂きます。 僧侶の外川さん。突然のソロ、ビックリされたでしょうが、頑張ってよくやってくれました。それに奥さんと子供さんの共演、よかったですね。他のコーラスの皆さんを引っ張ってくださっていたことも、印象に残っています。 ダーメ1で急遽、長崎から呼びました石多加代子。他のダーメの皆さんにも多少刺激になったでしょうか?マイペースのB型なのに、私がいろいろと急で無茶な条件を作って本番を迎えさせてしまい、申し訳なく思っていますが、今回もそれを乗り越えよく歌ってくれました。いつも、ご苦労様。そして、ありがとう、心から。 ダーメ2の小林由佳さん。忙しそうだったけど、頑張って歌も演技もどんどん良くなってきて、嬉しかったです。あなたの声はもっともっと鍛え上げられるような気がします。歌と演技はもともと表裏一体、大きく成長してね。これからビシバシ鍛えるぞ! 玉井泉さんのダーメ3。面白いキャラクターでした。押さえて飲み込んでしまう、課題の発声を直せば、今の3倍くらいの声が出せるようになるでしょう。本番近くになって、ゆっくり発声するそれができそうになりましたね。体全体を使って思い切りのびのびと歌うためにも、呼吸の訓練を自分でひそかにいつもしっかりとやり続けてください。 クナーベ1の牧場裕子。小学生とは思いがたい声でしたね。大成させるためにも、発声は焦らず、体全体をバランスよく使って、喉に余計な負担を掛けないことだけ忘れないでください。みんなに優しくなれるよう人間性を磨いたり、世の中を勉強することも、僕の思い描く「いい歌手」への道です。お母さん、兄弟たちとも、仲良く成長してください。 クナーベ2の佐藤いづみさん。生まれて何ヶ月というお嬢さんを連れてらっしゃったことが忘れられません。いいですね―――。子育てはこれからも大変でしょうが、それを周りの理解を得ながら、練習に参加する。とてもステキです。あなたが、出演する他の子供達を見てくれていたことも嬉しかった。それに何より、貴女はクナーベぴったり、とても可愛かった。まさに、中高生のクナーベでしたね。これからも、打ち上げで話したとおりの道が開けます。皆と助け合ってやってください。 クナーベ3の山口澄桃さん。長野から2時間もかけて来ていたとは、僕たちの次に凄いね。もともとソプラノの声を持っているのに、バランスの関係で3に廻ってもらいました。ごめんね。でも、3人はよく纏まっていたね、本当に可愛いクナーベ(ドイツ語で子供という意味です。因みにダーメは女という意味)でした。でも他の役もできそうだよ、この次ね。 さて、今回の人気者サルたち。見ザールは惣田知恵美さん。貴女の感性は、この役でどんなに輝いていたか、眩いばかりでした。妹ザルをよく引っ張ってもくれました。これで歌がよくなれば、鬼に金棒、最高の歌役者ですね。またいつか近いうちに、いろいろ話しましょう。 言ワザールの田中麻未。スラッとした可愛い子供ザルでしたが、演技力、というか感性はとても自由で、練習中もホントに楽しかった。そのキャラクターはお母さん譲りだろうけど、ちょっとお母さんよりしっかりしてるようにも見えたよ。お母さんにはマネージャー?もしてもらったので、いろいろ話しましたが、どこか抜けていそうでイイナと感じていました。僕は抜けている人と合うのかも知れませんね。とにかく、これから楽しみ。 一歩出遅れた観のある、聞カザールの那須野茜。途中で降ろされそうになったけど、みんなが怖気づいていたためか、踏ん張れてよかったね。時間の関係で、まだ君の100%の力は引き出せなかったけど、かなり声も通るようになってホットしていました。これからはラッキーを求めるより、実力を身につけることをまず第1にして頑張ってください。そのためならいくらでも僕をこき使ってください、皆さんも。(こんなことを言うと、どこかから怒られそうですが) エレクターンと助手を務めた野崎真琴。何でもできると、賛辞を寄せて頂いたかと思いますが、ま、当会に入って7年目、厚かましくも誰かさんから何でも習える利点をフル活用して、ここまで本人なりに成長しました。もちろんまだまだですが、皆さんに可愛がって頂いて(やはりポヤーンと抜けているので、皆さんが助けざるを得なくなるのでしょうね)ここまで来れました。本人に代わって全国の皆様に感謝。 練習ピアニストとして入り、本番はパパゲーノの鈴の音を弾いてもらった小林美季さん。そのどこかひょうきんなキャラクター、実によかったね。それに一番嬉しかったのは、貴女が僕の音楽をだんだん掴んで来てくれたことです。テンポが揺れなくなったのも、音楽を掴めて来たからでしょう。そういえば、上野さんの葡萄、おいしそうに食べていたね。上野さんも、葡萄も幸せなことでしょう。これからも、一緒に頑張ろうぜ! コーラスの皆さん、お一人ずつにはとても書けませんが、横浜に引っ越して東京オペラ協会に入りたいとおっしゃったお兄様や、80歳になられるのにいつも早く練習にいらっしゃっていたお兄様、少し不自由な足を何とか一緒に工夫して演技につなげたお姉さま、やはり目が不自由なのに困難を乗り越え最後まで頑張った礼衣ちゃん、眼鏡のことで長崎のスタッフが誤解を招くような発言により一時は傷つかれた内気そうなお姉さま、それから子供達については、最初あんなに少なかったのに、だんだん処理しきれないくらいの参加人数に膨れ上がり、僕は演出処理でまたまた楽しい工夫ができたことも忘れられません。 照明、舞台監督の吉本さん。今や照明界の大ベテラン、当会の出演者達からも好かれていらっしゃり、いつも私の舞台を支えてくださっています。 そういえば、読売交響楽団のOBの弦合奏、如何でしたか?本番では僕のタクトの微妙なニュアンスにも付いてきてくださり、かなり満足でした。それに、野崎のエレクトーンと小林さんのキーボード。面白い組み合わせでしたね。フルオーケストラでやるのはもちろんステキだし、こういう小編成も面白いし、またピアノだけでもそれぞれに楽しめます。そんな感覚でいましょう。 どなたかにお話ししたように、私は、与えられた条件で最高のものを作りたい。と願い続けてこんなオペラ活動を30年やってきました。与えられる条件は毎回千差万別です。でも自分に出来る限りのことは、喜んでさせていただく。この幸せーーー。感謝のみです。狭い音楽界やオペラ界だけじゃなく、世の中すべての人々とできる限り多く向かい合い、音楽で何が出来るか、これを求め続けたいと思います。 今回は、ふとしたご縁で、松本のステキな皆様とこんなステキな出会いが生まれました。何しろ、ユニバーサルデザインという言葉は使わなかったものの、僕の理想としてきたオペラのあり方を見事に表現する言葉です。略してUDオペラ。これから何が生まれるか、どうなるのか、私にもわかりません。私は確かに信州の皆様に、何か火を付けてしまったかも知れません。それがどうなるかは、皆様次第、というところでしょうか。 出演者の皆様、実行委員の皆様、またお会い出来る日を!
アンコールでも、打ち上げでもみんなで歌いましたね。
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