エドワード親書 2009年1月号
「魔法の笛と鈴」上田公演を終え

まさに旅芸人よろしく、今度は懐かしい上田の地でーーーー。
しかも、ついにオペラプラザ上田の誕生。

しかしながら、1月4日の追加練習に上田に行ったとき、楽観的な僕にしては珍しく本当に不安になりました。それほど、だったのです。
そして1月7日にそれこそ全力で皆さんと練習し、希望の灯がやっと見えだし、12日に行ったときには希望の灯がはっきりと見えだし、14日には確信に変わり、あとは本番までみんなで突っ走るだけでした。
お客様が300名足らずだったのは、少し残念な感じもしましたが、仕方ないと思いましょう。本番間際になって、やっと本当にどんな舞台になるのかが分かるものですから、みんなも今一、チケット販売に全力になれなかったのでしょう。
終演後受付で、「こんなに凄い舞台だと分かっていたら、もっと大宣伝してチケットを売りましたのに」とか、「素人がやるのに3000円は高いと思っていたけど、まさか本格的なオペラの声も聞けるとは」とか、また「子どもを含め、老若男女がこんなに見事に調和して楽しいオペラが出来るとは考えてもみませんで した」等と観客の方々から伺いました。

しかし、振り返れば大体いつもこのオペラではこのような感想なのです。お世辞ばかりなのか、僕の目指していることが本当に理解され広がるのに時間がかかるだけなのか、それは神様に任せますが、僕はこうして出会った皆さんと楽しく舞台を作り上げて行くだけです。それが一番いいのです。マスメディアに踊らされ てるよりは、自由に活動でき僕は幸せです。

それはともかく、制作は大変でしたね。まず、実行委員会の事務局をやるはずだった柳沢さんが、とんだハプニングでできなくなり、出演者中心の実行委員会を9月3日に集まって急遽立ち上げ、今井さんが事務局を引き受けてくれました。しかし所詮素人集団ですし、今井さんも仕事があって僕がきめ細かに指示できる 状態ではなく、委員長を引き受けて下さった深井さんからも、「大宣伝や協賛広告」について指示を受けられず、本番に流れ込んでしまいました。セレスホールの久保田さんがいろいろ心配して下さっていましたが、まさにその心配通りになってしまいました。この次伺ったとき、じっくり話し合いましょう。
しかし、掛川さんと西村さんが、私の送り迎えの他、1000枚のポスターを上田中あちこちに貼ってまわって下さったり、ダーメさんたちも会場取りなどいろいろ協力し合ってここまで来ることが出来たのでしょう。何と言ってもチームワーク、ですからね。

さて、歌手たち。

藤森さんにとっても新境地開拓、といったパパゲーノ挑戦でしたね。きっとピッタリのはまり役に、と思っていました。ご本人も、そうとう努力はしたと思いますが、日に日にパパゲーノらしく解放されてきて、見ていても微笑ましくてなりませんでした。エドワードパパゲーノに続くものを探してきましたが、藤森さん は大いにその可能性を見せてくれました。天真爛漫な性格を演じきるのは技術だけでは済まない天性のものが必要でしょう。
今まで当会では、殿様、ドンジョバンニ、と大活躍されてきた藤森さん。大いに期待しています。今後も、パパゲーノを深め、自分の十八番にして下さい。

清澄真達さんのタミーノは、ちょっと心配もしていましたが、ポルタメントも取って下さり、台詞もよく覚えられ、さすが清澄さん。台詞が多く、前回のオッタビオより大変だったかもしれませんが、お腹のちょこっと大きな王子様に可愛くなっていってくれました。カバレリアルスティカーナで声が心配ですが、その美 声をどうぞ堅持してこれからも是非、お腹のちょこっと大きな王子様を演じて下さい。

ザラストロの肥田雅宏さんは、貴重なバスの声をお持ちで、その上、上背もありピッタリでしたね。演技もだんだん、自信に満ちてきて、安心して見ていられました。前回のレポレッロとはまったく正反対の役ですが、どういう役であれ、その素晴らしい声を武器に、演技を極めていって欲しいものです。頑張って下さい 。

パミーナの大畑裕江さんは、日中合作歌劇「蓬莱の国―徐福伝説」から8年ぶりの出演。あの時よりさらに磨きのかかった声になっておられ、安心して歌っていただけました。パミーナはお姫様ですが、天真爛漫なパパゲーノと向かい合ったときと、タミーノに向かうときの心の変化を、明快に壺を押さえて演技し、しっ かり頑張っていました。時には合唱指導の助手もしてくれて有り難うございました。

隠岐美江子さんは松本市民芸術館以来の夜の女王。存在感のある演技が課題でしたが、本番に向かって前回より少し進歩できました。後、中音の響かせ方が今後の課題ですね。またいつかアドバイスを。

ダーメは今回5人で。左右対称の動きを指示しておきましたが、みんな頑張ってうまくやっていました。反応が遅いのがいまいちでしたが、本番近くでは軽快に動けるようになって来ました。
1の斎藤さんは、本番直前にどんどん良くなってきて、いいな、と思って見ていました。
軽々と歌えると、表現も思いきり出来て楽しくなってきたのでは?
もう一人は中学3年生の牧羽裕子。その大きな声をきちんとコントロールできるよう、うまく引っぱってあげたいので、乞、ご期待!演出助手というか、代役が何でも出来るので、時々本当に助かりました。これから、発声を鍛えようね。
2は、花岡祐子さんと橋詰幸子さん。キャラクターは違うものの、二人とも体を開けられず喉を詰めてしましたが、やはり本番では気合いが入ったのか声もそれなりに伸びて来ていました。しかし、発声を鍛えたらどんなにいいかーーーー。橋詰さんは、制作面でもいろいろやってくれてご苦労様でした。頑張ったよねー ーーー、分かっています。
3のキャラクターは、しつこいけれども、どこか抜けているところが、面白いのですが、滝沢麻由子さんは合っていて面白かったです。貴重なメゾの声も持っていて、鍛えたらいいですね。

モノスタトスはISSY。もう何度目だろうか?毎回、新しいチャレンジをするのは良いことですね。可愛いサルたちをうまく引っぱってくれて有り難う。

僧侶武士は、ゆっくり指導できなかったことが悔やまれます。しかし、本番では4人がそれぞれ微妙なバランスで舞台に立ち、よかったのでは?
まず矢吹宏二郎くん。大道具の柱作りもしてもらいました、急に頼まれ、ご苦労様です。
吉原君は声も大きく、発声を磨けば面白くなりそうです。きりっとしたところもあるしね。
藤原卓矢くんは、途中挫折しかけたけど、戻って来れて良かったね。
さて、最高齢の斎藤雄児さん。音を正確に覚えるのは大変だったかも知れませんが、なかなかのキャラクターで、存在感もあり、じつに面白かったです。

サルは、まず清水月。途中で集中力が途切れがちなのが気になりましたが、多分、変声期もあって、声が出しづらいからかも知れません。妹の聖奈は、最高、とっても良かったよ。とにかく二人とも、よく楽しんでくれました。もっと歌わせてあげたかったな。
言わざるの今井佑吏子さんは、制作で演技に集中しづらかったことでしょう。しかし、本番では頭も精一杯フル稼働させ、頑張ってくれました。本当にご苦労様でしたーーーーーーー。

クナーベ1には、小林朱里さん。声がもっと思い切って出せるようこれから頑張ろう。
今井裕美子さんは、クラリネットをやっていたんだねーーー。聞かせてもらえばよかったなーー。
大塚由美子さんは、低い声が出るので貴重ですが、そのキャラクターもなかなかですね。
同じく最年少クナーベの鈴木詩織さん、本当によく頑張りました。練習にもいつも早めにきちんと参加し、幼い子たちもよく引っ張ってくれて、嬉しかったです。

ダーメ軍団で参加され、青春を謳歌された大原綾子さん。これからもどうぞ、思い切り青春を謳歌してください。会場取りのお手伝いなど、ありがとうございました。

さあ、可愛いパパゲーニたち。みんなよーく覚えてるよ。僕がいないときは、騒いで言うことを聞かず、ほかの指導者を困らせてたと聞きましたが、本当ですか?そうかも知れないか?でも、僕にはとても可愛い子たちでした。思い切り音をはずして大声で歌っていた子たちも、本番近くから何となく音が合って来て、面 白いものだなあ、と思っていました。たまには思い切り外れてるのも可愛いんだけどねーーーー。お客様はどうかな?うるさい東京の評論家には何と言われるかな?まあ、楽しめるかどうかは、ひとそれぞれ。僕は大いに楽しみました。
青木宥佳ちゃんは、その面白い代表格。はじめ怖がっていた掛川礼乃ちゃんは本番近くで思い切りはじけだし、よかったね。斉藤希望ちゃんも、面白かった。酒井雪乃ちゃんは可愛く、よく気をつけて演技し、小さな子を引っ張ってくれていました。成澤葵南、侑南の姉妹も元気よく可愛く頑張ってくれました。西村美智 歌ちゃんも、礼乃ちゃんと同じく怖がっていたのに、だんだん開放されてきたのが、やっぱりな、とひそかにほくそえむ私でした。深井かれんちゃんも頑張りました、可愛かったよ。宮下美咲ちゃんはポケッとした感じが面白かったね、なかなかやるけどーーー。
全体にパパゲーニたちは可愛くて可愛くて、それを見るだけでも、はるばる上田まで練習に来てよかった、と思うこともありました。ほかの皆さんもそうだったのでは?まあ、指導者で大変な苦労をされた方もいると聞きましたがーーー。

ほかにも、東京や九州本部から応援を呼びました。グループ同士、交流もしてほしかったからです。どんどん交流を深めて、各地のオペラプラザがよきライバルとして競い合い、励ましあい、助け合い、それぞれの特色を活かしていってほしく思っています。

ピアノの島田みのりさん。大変だったことでしょうーーー。しかし、本番近くなって僕との息が合って来て、安定感のあるしっかりとしたモーツアルトの音になってきましたね。僕も嬉しかったです。オペラを全曲一人で弾き切るのは、どんなに気力と体力がいるか、皆さん、お分かりでしょうか?島田さんに、さあ、み んな大きな拍手を!
キーボードを弾いてくれた小栗華絵さん。あまり話せませんでしたが、どんどん参加してきてほしいものです。きっと、もっと開花しそうな気がします。

衣装の補充をしてくれた越原さんもありがとう。いつも松本からはるばる雪道をご苦労様でした。裕子たちの送り迎えもありがとうございました。

チラシのデザインをしてくれた大塚さとみさんもありがとうございました。何も力になれなかったことは心残りですが、この場をお借りし深く感謝申し上げます。

上田でどのようなオペラ活動が面白いのか?今考えています。ユニバーサルデザインの狙いは今回あまり活かされませんでしたが、今後は障害を持っていらっしゃる方々にも、もっと参加していただいて、私の目指している「ユニバーサルデザインオペラ」の輪を広げてゆきたく願っています。
長野県は大きいところですねーーー。愛媛は長いところだな、と思いましたが。
長野県各地からひとつにまとまってオペラを公演することは難しいのでしょうか?
上田だけでも、ほかにもいろんな音楽活動をなさっており自分たちの組織を守るため、私たちの事業に参加しづらいところもあったようですが、みんな、もっと自由になれたらいいのになあ、と思います。

私が目指している活動は、現実離れしてあまりに高邁なものでありすぎ、一般の音楽家や、既成の価値観に縛られている方や、音楽界での既得権にしがみついていらっしゃる方にとっては面白くないこともあるようです。
しかし、私は呼びかけたい、音楽家も音楽をもっと自由に楽しみましょう!
意外かもしれませんが、音楽家は自由に音楽を楽しみづらいのです。職業になってしまうから、評価第一、になるのですね、かわいそうな気もします。
僕は?僕は、皆さんと音楽を楽しんでいるだけです。ほかに何もありません。ぼくの力を必要としてくださるところに歌で遊びに行くようなものです。必要なくなれば雲の上に帰らせていただくだけですからーーーー。(笑い)

それにしても、このミュージカルオペラ「魔法の笛と鈴」、やればやるだけ新しい発見もあり(もちろん出会いも)可能性に満ちた作品ですね。面白い作品を残してくれて、モーツアルトちゃん、ありがとう。あなたは、私たちの中で、今もこんなに生きていますよ。
原作のシカネーダーさんもありがとう。フリーメーソンを無視し、あなたのオリジナル台本を滅茶苦茶変えてしまいましたが、案外これでよかったのでは?

今後、信州がどうなるか?上田がどうなるか?まだ不透明なところがありますが、今のところ終演後お話したように、夏ごろ「面白いコンサート」をし、来年に「フィガロの結婚」か、日中合作ミュージカル「The Land of Happiness」をと考えつつあります。

それでは信州の皆様、また近いうちお会いできますようーーー。

   2009年1月20日

  石多エドワード