エドワード親書 2010年2月号
オペラプラザ福岡公演「The Land of Happiness」

今回の大きな課題として意識し続けたのが、アマチュアだけでどこまでできるか?でした。
練習は約半年間で月に2回のレッスンという限られた制約の中、みんなをどこまで引っ張りあげることが出来るか?という自分との戦いでもありました。幸いに個人レッスンを月に2回程度できた人は大きな成長の手ごたえを感じましたが、たった2時間の全体練習の中でしか指導できなかった人には、かなりの個人差が生まれたかも 知れません。
基本的にはみんなアマチュアですから、自分が出来る範囲で舞台に参加すればいいのですが、二度と戻ることのない私たちが共有した練習時間をどう使うか?いろんな力量を持つみんなを一つの舞台にどう仕上げて行くか?長崎からのメンバーとの共演の課題など、石多加代子の協力を仰ぎましたが、今回も楽しくやり 甲斐のある仕事でした。

日中合作歌劇「蓬莱の国ー徐福伝説」を元にしてありますが膨大な経費のこともあり、日本側だけでも出来る舞台を目指してこのミュージカルを作りました。内容も中国政府に遠慮することなく私の台本通り公演出来たことは幸いでしたが、アマチュア中心で望みどおりの公演できないかという私の悲願は、まだ叶いません。昨年行 った愛媛での初演から、演出面で徐々に改良しているのですが難しいものだと終わった今も痛感しています。

この台本と音楽については、観客も出演者の皆さんも大体揃って賛辞を贈って下さいます。しかし、演出面や演技、そして歌唱面では今回も課題が残りました。もっとうまく指導できなかったのか、今も考え続けています。それはともかく、お一人ずつに感想を述べておきましょう。

まず、徐福。
敢えてチャレンジしてもらう苦肉の策として、あまりいい方法ではありませんが一幕と二幕でキャストを変えてみました。
私の描いている徐福像にどこまで近づいてもらえるかに挑戦したのですが、結果的にはまだまだ私の力が足りませんでした。
一幕の平山繁文さんは、浅くなりがちなミュージカルっぽい発声をかなり直せたのは大きな進歩でしたね。周りのみんなも喜んでいたのがよく分かります。舞台面でもいろいろ気遣い、大変だったことでしょう。これからは、更に丁寧な深い歌唱と演技が出来るよう導きたいと願っています。せっかくいい方向に向かっていても、す ぐに戻る傾向があるので、これからも自らをしっかり律してさらにいい演技と歌が歌えるよう誠実に精進してください。そんな立派な声を持っているのですから。
ニ幕の野田昭穂さんには、徐福を歌うのは相当ハードルの高いことですよ、と最初に釘を刺しておきましたが、ご本人のやる気がまさってチャレンジしてもらうことになりました。平素の練習では野田さんの真摯な姿勢にみんなも敬服し驚いたのではないでしょうか。私のアドバイスをどんどん吸収され時々凛々しい姿 に本物の徐福を見るような気持ちになりました。ご本人はチェリストでもありプロの音楽家ですからいろいろわかっていらっしゃると思いますが、これからはやはり呼吸を鍛え、発声と歌唱力をしっかり身に付けてゆきましょう。

始皇帝には諌山孝行さん。最高齢でありながら、もっとも安定した歌唱力を持っており、頑張ってもくださいました。アリアのリズムについては少し混乱したようですが、ご本人にとってはやはり練習不足だったのでしょう。伴奏と合わせることが少なかったこともその一因でしたね。また、本番での突然のミスでは、伴奏の花房さ んも心臓が止まる思いをしたかも知れませんが、やはりお客様には気づかれないことでした。誰だって、ミスはするものです。

だからみんな!謙虚になってしっかり練習をしよう!プライドはかなぐり捨てて!

愛燐には藤沢美保さん。
生来の前向きな姿勢がこの大役と向き合うことで、揺れ動いたことでしょう。
歌うこと以外にもいろいろ気を配らねばならず、本当に大きなプレッシャーの中、頑張りました。台詞を言う時の気持ちから、ソロに移るときの緊張感と向き合われるとき、今までのレッスンの成果を!と願わずにはいられませんでしたが、結果的にはレッスンで身についたテクニックが半分以上出せたのではないでしょうか。アド バイスした、緊張と弛緩を自分でコントロールしながら歌う、これが今後も鍵ですね 。

キリモには原田恭子さん。
プレッシャーといえば、一番圧し掛かっていたはずですが、生来のおおらかさ?で、ほぼレッスンどおりの歌が歌えました。山とある雑用をこなしながら、もう居直って舞台に向かったのでしょうね。今後は更に呼吸を鍛え、安定した歌唱力を身に付けましょう。声が今までの三倍くらい出るようになってきたことは、まさに練習の 成果だと思います。これがもっと早くからーーー、と思うのはお互いですね。

邑長には大石愛子さん。 声も持ってるし、態度も大きいので、十分に邑長を演じることが出来ました。発声も呼吸が弱くなりかけて声が伸びないでいたのが、本番では少し取り返《?せて歌えホットしていました。これからは、毎日のように呼吸練習をして、体の周りを響かせ続ける発声を目指してください。

仙人にはオペラプラザ長崎から廣田修さん。不器用なお人柄でありながら、誠実な努力家でもあり、風貌もまさに仙人、とてもよかったです。細かいミスはともかく、子役の二人とのチームワークがもう少し取れたら、最高の仙人でした。長崎との距離がーーーー、仕方ないのでしょうか?

女の子には井崎未麗ちゃん。ちゃん?とは言えないか。恐れ多くもオペラプラザ福岡の発起人様なのにね。今回は優しい女の子の役ーーーー、頑張っていました。あかりとのアンサンブルも二人でよく練習していたようだけど、私のイメージどおりに演じきってくれたように思います。以前から発声では声がよくあたっているのでい いのですが、やはり呼吸が弱くなってきているのが分かります。みんなもそうですが、呼吸をもっと大事にしましょう。

さて、男の子役の藤野あかり。レッスンでは完全に直っていた音程の問題。本番で、思わず誰かが一緒に歌いだしましたが、惜しかったーーー。まあ、お客様にはあまり分からないようでしたが、指示したとおりドレミの階名で100回あかりが毎日歌っていたら、どうだったか?保育士として忙しすぎたようですが、残念至極でした 。また、全体練習で歌うとき周りのみんなの目(耳?)を気にして、かえって歌の集中力を失いかけるのはよくなかったね。ボクの前だけでしか歌わせないようにして、間違った回路に絶対入らせないように訓練したかったです。

余談ですが、あかりには何度か話したことがあります。人には独自の思考回路(行動癖)というものが出来てきます。初めて通るときより一度通った道は通りやすく、何度も通るとその道が更に通りやすくなる回路のことです。つまり歌でいうと、正しいと思う歌の道があったら、下手な試行錯誤はせず、その正しい道以外を通らな いことです。そうすれば正しい道がどんどん通りやすい道になってゆき、やがては自然にその道に入れる訳です。人生は何度も失敗していいと思います、失敗を生かして成長すればいいのですから。しかし発声については、失敗を重ねるたびに悪い発声の回路が記憶に残り、いい発声の道が遠のいてゆくように思います。

戻ります。
合唱で儒家などをした、桑原千恵子さん。相当緊張していたかと思いますが、これを乗り越え徐々にこの緊張感を楽しめるように導きたいです。二度と台詞は言いたくないですか?ダメ!
つぎはもっと出来ます、ボクと一緒に頑張りましょう。

松田加代子さんも儒家で。とにかく大きな声で、というボクの指示をよく守ってやってくれました。 これから歌の発声もどんどん磨きましょうね。相当大きな声になるような気がします。

前原からの子供たちは頑張ったね。江川兄弟は、まず莉貴君。台詞も頑張って言っていました。愛莉ちゃんは最後まで心配させましたが、ゲネプロから突如生まれ変わったように見事に「ねえ、愛燐!」が言えるようになり、みんなも拍手したくなりました。
田中琴子ちゃんは、いつも率先して歌い、演技して、目立っていました。あの、よく通る声は大人顔負けでした。
西川天志くんは役者ですね。頭も廻りすぎるくらいよく廻って、何をしたいのかがすぐ分かってくれ、自分でもどんどんやりたくなってくる様子が面白くてなりませんでした。
藤村愛花ちゃんは、お母さんの影響か、いつもおしゃれで演技もよくやっていました。そういえば、この前原軍団から「監督は出てくださらないんですか、出て引っ張って下さったほうが」とせがまれましたが、「今回は許してください、これも新しいチャレンジです」、と説明しておきましたーーーー、しかし納得できたかな?
そういえば、舞台には飛び入り参加の子供もいて楽しくやっていたようですね。
オペラプラザ長崎からは中尾兄弟。もっと練習に参加できればよかったけど、今回はつつましく参加、というところかな?
同じく中山兄弟もはるばる八女市から。本番で本当に楽しそうでしたね。
藤沢朝陽は、はじめ前原軍団に押されているようで心配でしたが、さすが子供同士、だんだんいたずらし合えるように仲良くなってきてよかったです。
藤田聖奈はもう大人の女性の誰よりも背が高くなり、子役ではなく大人役でした。声も同様に急に成長してきて楽しみです。ちょっとボヤーっととぼけているキャラクターもだんだん素敵に変わってくることでしょう。

ピアノはいつもの花房聖子。本来器用で機転も利き、信頼できるので今回もお願いしました。楽譜が不備だったこともありますが、ちょっと練習不足もあったかな?忙しい為、練習に日参してみんなと合わせるのも難しかっただろうけど、これからはもう少し練習に来てくれると嬉しいです。

オペラプラザ長崎からの共演者は、みんなご苦労様でした。長崎でも自力で公演したくなりましたか?突然出演された山口さんもご健闘ありがとうございました。長崎のメンバーの方がキャリアが少し長いこともあり、リーダー的なことをしてくれた人はありがとう。縁の下の力持ち的に手伝えた人は尚ありがとう。特に石多加代子 は指導にも数多く来てくれ、福岡のメンバーの中に入り込みながらいろいろ引っ張ってくれた上、本番でもコーラスの要となって支えてくれました。
とにかく長崎と福岡は約1時間半の距離、これからも互いにいいライバルとして競い合い、また助け合い、励ましあってほしいものです。
そういえば岡山と愛媛も2時間くらいなので、今後いつか共演し合えたら嬉しいです。

とにかく皆さん、舞台では無限の仕事を見つけられます。誰がどんなことに貢献したらいいかはボクも考えますが、やはりその人次第です。最終的には人間性ですから、後はひたすら日々自分を磨くだけですね。舞台人としては当たり前ですが、人には優しく手を伸べ自分には厳しい目で鍛え上げましょう。

貴方は舞台活動でどんなことをなさりたいですか?
ボクも今回出演しないことによって、何か感じていますが、やはり現状では出演して引っ張るほうが、当会の実情にはあっているのかも知れませんね。
僕の場合、旅から旅への体が大丈夫か、というスリルがつきものですがーーー。

寒い毎日が続いております。全国の皆様もどうぞお体に気を付けてお過ごしください。


   2010年2月17日

  石多エドワード