エドワード親書 2017年3月号

オペラ「高山右近」大名町教会公演が終わって

参加された各地からの皆さん、本当にご苦労様でした。
公演後の拍手でお分かりの通り、お客様が本当に感動してくださり嬉しかったですね。
いつも思うのですが、これだけ感動してくださったのだから、支援の輪がもっと広まればいいのに、と思ってしまうのは愚かでしょう。ゆっくり愚直にやってゆきましょう。

受付で終演後お客様をお見送りしましたが、感動されたお一人お一人のお顔が実に美しいものに思えました。
これはもう司教団に見せてはどうですか、と主任司祭の杉原神父様がおっしゃった言葉も印象的でした。
長崎から見に来てくださった野下神父も後日、「皆さんは全員プロの方たちですから見事でした、ステージが狭くて動きづらかったのではないですか?」とご感想でした。全員プロと思っていただいたことは光栄の極みでしたが、恥ずかしいですね。野下神父は、西坂で殉教した26聖人のオペラを製作された方です。

高山右近

さて、右近役の國元隆生。誠実なお人柄が今回も印象的でした。急にお願いした「いつか」というつけたしの言葉も引き受けてくださり、感謝しています。最後の「剣を置き手を差し伸べよ、貧しいものと神はともにある」の歌は、特に美しく響いて、お客様も胸に深く共感されたことと思います。

ロレンソ役の蔵田雅之。もう当会ではベテラン中のベテランで、当会作品への理解と歌唱力や演技力など貢献度の高さから言っても、なくてはならない人になってしまいました。モーツアルト劇場の代表になってしまわれたそうですが、どうぞ当会こそ心の拠り所であり続けてください。

同じく惣兵衛の枝川一也。蔵ちゃんとは昔からの刎頸の中だったようですが、枝ちゃんのどこまでも優しいお人柄とあの甘くよく通る声は、相変わらず皆を魅惑し続けたことでしょう。枝ちゃんも、当会を心のリフレッシュ場所にしてくださり、末永く皆とともに歌い続けてください。

石多加代子のメイド役も、今回が一番よかったように思います。メイドの言葉が上滑りすることなく、お客様の心にしっかり浸み込んでいったかと思います。

吉井美幸のガラシアも美しく見え、声も本番では一番よく通って嬉しかったです。何しろエドワードマジックを一番吸収しているはずですから。

乞食女の秦美智世は、声そのものはもう少し体がほぐれてくれるともっと伸びたように思うのですが、歌の心は充分伝わってきました。これからも精進ですね。

ジュスタの原田恭子も音程がしっかり決まって今まででも一番よかったです。まだ余裕がないので、これからはもっともっとテクニックを磨いて思ったように歌えるよう頑張ってください。

ルチアの川内奈都子も相当緊張していたけど、よく乗り越えて歌い切りました。やはり奇麗だと言われたようですが、本人も自覚しているように歌も奇麗だったと言われるよう頑張ろうね。

ビビアナの兵藤好美。年齢不詳なので孫娘にもされてしまいましたが、やはり中音がしっかり出るのでよかったです。何しろ夜の女王からビビアナまで、よくこなしてくれます。

廣田修は光秀と忠興。今回は今までより声がお腹とつながっていたので伸びてきてよかったです。やはり精進ですね。舞台監督としてもいつも通り頑張ってくれました。

同じく岩永一也も舞台のことをしながら秀吉とシルバを好演。発声のことなど監督からやかましく言われながら、少しずつ成長してきて実は嬉しく思っています。恵まれた資質に甘んじることなく、しっかり成長していってくれることでしょう。

およねの山口陽子。不調だったのに、本番ではさすがにいつもながら楽しい「およね」を演じきってくれました。

千利休に抜擢した藤澤美保。本番で一番よかったのはさすがです。お客様もあの会話の深い内容をじっくり噛み締めてくれたことでしょう。

桑原千恵子も右近は初挑戦でしたが、頑張ってくれましたね。

廣田結希も右近初出演で初の内藤好次役に。だいぶりりしくなってくれて良かったです。

越智大之も気合が入った伝令役になってくれていました。

愛媛からの松島・哲・ルカスもこれで最後だと言っていますが、どうなることやら?

オペラプラザ長崎からは他に、川口優子、坂田直子、中牟田峰子、岩永朋子、山下康子、日野秀一君、 みんなもそれぞれ自分の現在出来るだけの力を発揮してくれたように思います。

秦美代子と雄路もだんだん役者の道を歩みだすのか、と思うほど面白くなってきたね。

最後に野崎真琴のエレクトーン。さすがに安心して任せていけるようになりました。歌手がズレたときも、さっと僕に合わせてくれていました。いつもながらいろいろご苦労様でした。

照明を手伝ってくれた、深見則子と寺田梓、二人ともありがとう、助かりました。

受付を手伝ってくださった方々も、ありがとうございました。

こうして誉め言葉の羅列のような親書になってしまいますが、本当にそう感じているのです。練習中にはあまり褒めないそうなので、親書ぐらいは褒めちぎっているのかも知れません。
歌唱力や演技力にはもちろん頂点などありませんから、舞台に立つ私たちはひたすら努力の積み重ねですね。褒められて嬉しいのは当然でいいのだけど、自分をしっかり見つめる目をもって、無限の向上を目指しましょう。

高山右近

この「高山右近」。私が今、これだけなぜ力を入れているかは、終演後のあいさつでも話したように、現代の世界情勢に右近の残した遺言がどんなに大切なメッセージになるか、と思い込んでいるからです。
打ち上げの席でも話したかと思います。
我々はオペラやオペラ界に奉仕しているのではない。オペラという素晴らしい手段を使って、世界平和や世の中を元気にすることに少しでも貢献できるよう演奏するのだ。
技術が先行するのではなく、もっとこう歌えたらどんなにこの歌のメッセージを深く伝えられるかと思うのに、思うように歌えないのは悔しいではないか。だから思った通り歌えるように技術を磨くのだ、と。
また最終的には、その人の人間性だとも話しました。舞台上の私たちは、その役になりきっているはずですが、個々人の人間性も滲み出てきています。怖いほどですね。
日本人の本来の美徳である、清貧、謙虚、陰徳、自然賛美などが忘れ去られないようにいたいものです。これをオペラで世界に発信出来たらどんなにいいでしょう。
それを伝えようとするエドワードのオペラでも、みんなはいろんな役になりきって歌い演じられるだけの技術と、想像力が求められるのでしょう。

今回も指揮をしながら、この歌手の歌をもっとこう引っ張りたい、もっと集中させたい、もっと自由に伸び伸び歌わせたいと、努めていました。思うように引っ張りきれないと感じたときは、少し焦ったりしましたが、野崎の協力もあり、全体として何とかリードすることが出来てホッとしています。
しかし、そんな細かいことより、お客様とともにこのオペラの感動を共有できたことが、みんなも一番大きかったのではないかな。遺憾ながら、このオペラ「高山右近」がこれからも必要な時代が続くでしょう。青筋を立てって「世界平和」を唱えるより、さり気なくお客様と、人間っていいな、戦争なんかしたくないな、という気持ちが広がって来ることが一番ですね。

3月12日には岡山で「フィガロの結婚」。26日には入間で「天空の町」が待ち構えています。休む暇などあるはずがありませんが、九州本部で衣装や舞台道具の点検整備洗濯などに従事してくれているスタッフのことも忘れないでくださいね。
まあ、東京オペラ協会グループは、みんなの気持ちで成り立っているのですから、既にわかり合っているだろうけど。

春が近づいてきました。空の青さが今日も気持ちいいです。
昨夜は金星と新月に限りなく近い三日月が夜空に見事に浮かんでいました。
この地球は素晴らしい星ですね。
今度、みんなとはどこで会えるのかな?元気でね。


2017年3月1日

 石多 エドワード