エドワード親書 2018年4月号

春の歓びが再び

日本の四季の美しさ、感動とともに感謝の気持ちが膨らんできます。この春も各地を回りながら自然の凄さにただただ見とれてしまっている今日この頃です。
梅、桜、木蓮、こぶし、八重桜、菜の花、サツキ、などが見事に順を追うように春を彩ってゆきます。果樹園では、毎年のプラムや桃に加え、第三果樹園で梅と梨が咲きました。
皆さんのところでは如何ですか?

3月は11日に岡山、17日に入間、と公演が続きました。
出演者やスタッフが活き活きする姿に、いつもながらやってよかったと思います。
さらに、3月25日には「お花見」で福岡正信さんの山を何年かぶりに訪問し演奏しました。


まず岡山では、カルメンとヘングレの二本立て
まとまらないかという危惧を撥ね退け、お客様のあの感動と称賛の拍手。ユニバーサルデザインオペラが賛同された証でもありました。よかったですね。広瀬さんはじめ、今までのみんなの努力が豊かに実ってきたのでしょう。

さて、私たちは何故オペラをしてるのか?何故舞台に立つのか?今回各地のみんなに問いかけてみたくなりました。
努力して見事に上達した歌や演技を、多くのお客様に褒められたい、とかユニバーサルデザインでオペラにチャレンジしてることを、立派なことだと褒めてほしいーーーーなどという気持ちは誰にもあるでしょう。
しかし、これからは世界や国内のいろいろな人たちにもう少し思いを馳せてみませんか?
確かにオペラで楽しめばそれでいいのですが、自分たちの歌や演技がまわりにどんな影響を与えているのか、考え直してみましょう。
今回のお客様は、レピーターとして来てくださった方も多いと思いますが、何に感動してあれだけの拍手をくださったと思いますか?
みんなの歌唱力と演技力に、曲に、演出に、舞台に、裏方の努力に、知り合いの健闘ぶりに、ユニバーサルデザインオペラに、それらすべて総合的に?
こんなところかと思います。

そこで考えましょう。もし私たちのオペラで:
世界が平和になれたら、自然を大切したい気持ちが広がれば、いろんな人に優しくなれたら、人間ってやっぱり素敵だなと思えたら、などと願ってやってみませんか?
そんな尊大な気持ちは生まれませんか?
でもね、もし。
誰かが天から素晴らしい声を与えられて、努力できる力ももらえ、周りも応援してくれる環境もあって、かなりの見事な歌や演技が出来たとします。それを披露して拍手喝さいをもらっているーーーー。でも、それだけで済ますなら、何か物足りないのでは?
いやそれで充分、と思えるのも分かりますが、もしいろいろなハンディーを背負っている人間がほんの少しだけど、これだけ出来るようになって誰かを喜ばせた、なら暖かく拍手したいですよね?

さらに。
努力できる力も情熱もないと思っていた人が、何かをきっかけに楽しく歌い出した、ということがあれば、それはより深い何かを私たちに啓示しているのではないかな? 確かに、才能に恵まれ、取り巻く環境に恵まれ、スターダムにのし上がった人たちも大変な努力をしてきたでしょう。しかし、そうでない人があるとき何かのきっかけで歌い始めて、それが傍で聞いていた人の心を打ち楽しくなっていただけたらーー。
まとまりませんがつまり、恵まれた人が自分の歌唱力や演技力を誇るような舞台だけでなく、どんな人も誰もがそれぞれに輝いてる舞台を作ることの方が好きだと言いたいのです。
実は僕も舞台で自分の歌や演技をどうだ、と言わんばかりにいる自分を感じることがありますが、後でそっと恥ずかしくなります。愚かだな、と。

こんなことはともかく、みんなが頑張ってくれてるのを見てるのは嬉しいし誇らしげに思えることもあります。つまり僕も自分の力を誇ってしまっている愚か者なのです。それが分かってるから、時々いろんな角度から自分を見つめ直すようにしています。

一人ずつ思い出しましょう。
まず、仕切りたがり屋で目立ちたがり屋を自認している宇高君。どんどんいい声になって来てるのですが、今回も全力投球。よく頑張りました。ヘングレでは特に自然な演技を心掛け、頭でっかちの部分があまり感じられなくなってきたね。努力したのでしょう。何しろ頭がよく回るので、助手としても見事な働きですが、人間的にも少し大きくなったかな、とひそかに喜んでいます。

広瀬千加子さんについては、いつもただただ脱帽です。おそらく家では大変な苦労をされた上での事務局長であり、歌手でもあるわけですから。
それを乗り越えて見事に僕を掌で転がし続けて、もう10年を迎えようとしているのです。どんなに頑張ったことでしょう、目に見えない努力を讃え、そっと深く感謝しています。

高原萌はどんどん良くなってきて声も良く通り、目を見張ります。

保坂江利子は、「舞台が好き!」って体中で表現してるね。見てるだけでとても楽しくなります。

武藤美鈴も真面目過ぎて体を固くしてしまうのを、得意の演技で弾けて柔軟になればいいなと思っています。

今井勉もいつもながら真剣な歌と演技が、皆を牽引してくれてましたね。

篠原加代子のミカエラ。だんだん歌に集中出来てきたのが良かった。

福間隆雄もだんだん歌い方が自然になって来て、好感が持て、素敵です。

薮内彩菜はナビゲーターにも挑戦しましたが、思い切り弾けるようアドバイスしました。発声も素晴らしいものを持っているのでじっくり磨きましょう。

高橋祥子もフラスキータに眠りの精、さらに成長しようと意欲が感じられました。ちょっとしたハプニングは誰にもあること、やはりいい発声をしてるので自然に歌えるよう更に磨きましょう。

岡崎起恵子はお客様の大きな期待を受けながら今回も頑張りました。テディも可愛くて可愛くてーーー。

田辺真一も、なんだかんだと心配してもしっかり歌いきる姿はいつも素晴らしいと思っています。これからも皆のいい手本となるよう頑張ってください。

岡本直美はピアニストからついに歌い手デビューです。素直な発声をしてるのでこれからも大いに期待しています。

指揮の萩原勇一もオケを頑張って引っ張っていましたね。人間的にも余裕が出て来て、皆の音楽的な柱となって優しく支え続けてくれることを期待しています。


入間の魔笛:
最高に評判がよかったと、出演者のみならず、各方面から賛辞が飛び交っていましたね。
キャストもまあまあ揃い、子どもたちも大活躍、市長、副市長、教育長、と揃い組で鑑賞してくださり、ついパパゲーノも客席で悪戯してしまいました。

大森麗のパミーナ、よかった。

平野真理子の女王もよかった。

大地は、テノールからバリトンまで幅広く歌っているので、発声も難しいのですが、タミーノとしては少し楽に歌えるようになってきたかな。これからも楽々と歌うという感覚を常に持ち続けてください。

三浦仁美、土屋和子、田村多佳子、このダーメたちはもう最高。
お上品な皆様なのに(多分?)よく役になり切ってくれました。

クナーベでは、國元美乃里と仲濱美海がしっかりと歌って支えてくれてありがたかった。二人とも、これからの大きな成長を期待しています。

また、子どもたちの頑張りぶりも凄かった。いちいち名前をあげませんが、それぞれの成長を楽しみにしてるよ、伸び伸びと育ってね。

エレクトーンの野崎真琴は、今回特に重労働で大変だったと思いますがよく頑張ってくれました、ありがとう!

忘れてならないのは、愛媛公演に続いて吉井美幸が作ってくれた映像です。絶賛されていました。石多加代子が投影担当になったのも面白いことですね。こんなことをさせていいのかな?

入間キッズの子どもたちがどう成長してゆくのが楽しみでなりません。将来の日本や世界を彼らが背負ってゆく、というと重荷になるでしょうが、誰もがいろんな年齢層とともに歩んで行きながら、世の中を楽しくしてゆきたいですね。


3月25日には福岡正信自然農園でのお花見に突然行けることになり、天空の町から5曲ほど愛媛メンバーと一緒に歌いました。今回は農園に2年間滞在し、正信さんの「わら一本の革命」を初めて英訳されたラリーさんと黒沢さんもお見えで、いろんな話も出来ました。この英訳のお陰で世界十数か国に翻訳されて出版されているのです。アメリカでは50万部出版されたそうです。日本では残念ながらーーーー。何しろ何もいらない農法ですから、日本の農機具メイカーや、農薬会社は困るのです。――――。
正信さんの古い本を頂いたので希望者にはあげますから、愛媛の秦さんに申し出てください。
正信さんの無の哲学が、人類の最後の指針でしょう。



今回も思いつくままの親書になってしまいましたが、この春の素晴らしさに免じてお許しください。

4月の総会と合宿、東京事務所の移転計画、5月26日の滋賀県高島ガリバーホールでの「天空の町」、6月には新宿合唱祭、8月12日にはオリンピックセンターで「忘れられた少年」か「天空の町」、10月には長崎のウエイブホールでオペラプラザ長崎30周年記念公演「フィガロの結婚」、12月にはオペラプラザ愛媛10周年記念コンサートを新居浜駅前のあかがねミュージアムで、来年1月14日にはオペラプラザ岡山の10周年記念公演で「天空の町」が岡山市民会館で、そして来年7月末にはオペラ「忘れられた少年」のポーランド巡演が待っています。「忘れられた少年」も映画化しますし、次作「マザーテレサ」が待っています。
これは引退どころではありませんね。これからも気を引き締めて、各地の皆さんとともに歩みたいと思います。

皆さんがそれぞれに楽しく過ごしていらっしゃることを思いながらーー。感謝!


2018年4月3日

 石多エドワード